創作民話 カエルのレインウェア2023年04月28日 09:34

高萩市の山間部に咲くミズバショウ
       カエルのレインウェア

 鈴木さんちの田んぼにすんでいる、トノサマガエルのユーチカは素敵なレインウェアがほしくなりました。
 みなさんは、カエルは雨が大好きだと思っておられるでしょう。でも本当はそうではないのですよ。だってそうでしょう、人間にとっては、雨つぶなんてものは小さいから、体にあたっても痛くもかゆくもありませんよね。ところが、カエルたちにとってはそうではありません。
 人間でいえばソフトボールくらいの大きさの雨つぶが、空から降ってきて裸の体にあたるのですよ。顔にあたったりしたら、鼻の穴がふさがれて、息ができなくなることもあり、ブルブルってして「あー、死ぬかと思った」なんてこともあるのです。
 なので、雨になるとカエルたちは、田んぼの水にすっかりつかって、「雨よぉ、早くやめ!早くやめ!」と、みんなでお祈りの大合唱をするのです。けっして喜んで鳴いているのではありません。
 そんなですからユーチカは、雨の日に着ることができるレインウェアがほしくなったのです。
 ユーチカはまず、カミキリムシのクラホシを訪ねました。
 「クラホシさん、素敵なレインウェアがほしいので、桑の葉で生地をつくっておくれ。」
 「いいともよ。葉脈の少ないところをえらんで、体によくフィットする生地をつくってさしあげようね。」
 クラホシは二つ返事で引き受けました。さっそく翌日、クラホシが桑の葉でつくった生地をもって、鈴木さんちの田んぼへ届けにきてくれました。
 ユーチカはつぎに、大きな樫の樹にすんでいるクモのタンブリのところへいきました。トノサマガエルは、アマガエルとちがって、木のぼりがじょうずではありません。でも、素敵なレインウェアのためです。いっしょうけんめい樫の樹をのぼっていきました。
 「タンブリさん、この生地で素敵なレインウェアを仕立てておくれ。くれぐれも縫い目から水が入らないようにたのみたいんだけど。」
 「ユーチカさん、まかせてください。この生地できっと良いレインウェアをつくってさしあげましょう。」
 翌日、クモのタンブリが鈴木さんちの田んぼにやってまいりました。ユーチカはうれしくて、タンブリに何度もなんどもお礼をいいました。
いく日かして、ユーチカが心まちにしていた雨が降りだしました。さっそく、桑の葉でつくったレインウェアを着こみます。
 でも、しばらくするとレインウェアがバラバラになってしまいました。クモのタンブリは、生地をていねいに縫いつけずに、クモ糸の接着剤でべとべとつなぎ合わせただけだったのです。ユーチカは、足元にちらばった桑の葉をながめながら、ぼうぜんと雨に打たれていました。
 次の晴れた日に、ユーチカはカイコのモリーナの家にいきました。なんどもいいますが、トノサマガエルはアマガエルとちがって、木のぼりがじょうずではありません。でも、素敵なレインウェアのためです。一生懸命に桑の木をのぼり、モリーナの家の戸をたたきました。
 「モリーナさん、このバラバラになったレインウェアをしっかりと縫いつけていただけないかしら。」
 「あらあら、やわらくてすじの少ないすてきな生地ですこと。これなら、あなたの体にぴったりのレインウェアをつくれますよ。」
 モリーナはこころよく引き受けてくれました。翌日、モリーナが鈴木さんちの田んぼへやってきました。
 「どうも下草の上を歩くのが苦手でね。もごもご・・・。」
モリーナの仕立てたレインウェアはとてもすてきなものでした。美しい生糸でしっかりと縫いつけてあり、どんなところからも雨がしみてこないように仕上がっています。ユーチカはとても満足でした。
 「ありがとうモリーナさん、桑の木までお送りしましょう。」
 ユーチカは大喜びで、モリーナを背中に乗せ、桑の木へ送っていきました。
 ユーチカの素敵なレインウェアを見て、仲間のポーシュは自分も同じレインウェアが欲しくてたまらなくなりました。そこで、カミキリムシのクラホシに桑の葉の生地を作ってもらい、次に樫の樹を一生懸命のぼり、クモのタンブリに仕立てをお願いしました。ポーシュは、ユーチカが最初のレインウェアがバラバラになったのを知らなかったのです。だから、クモのタンブリが手抜きのお仕事をすることを知りませんでした。
 雨の日にポーシュは、先日のユーチカのようにぼうぜんとしていました。足元にはバラバラになった桑の葉が散乱していました。
ポーシュはひと声「ゲコ」とないて、タンブリのところへ跳ねていきました。とても早く跳ねていきました。
 トノサマガエルのポーシュも、やはり木のぼりが苦手でした。苦労しながらタンブリの住む樫の樹を一生懸命のぼって、タンブリの家の戸をたたきました。
 クモのタンブリは眠そうにしながら戸を開けて、おっくうそうに出てまいりました。
 「やあポーシュさん、朝早くからなんだね?お礼ならいつでもいいのに‥‥」
 タンブリの言葉を聞きおえるかおわらないかのうちに、ポーシュはひと声「ゲコ」とないて、タンブリを呑みこんでしまいました。