子供の王国 ― 2022年04月19日 15:22
今回もウクライナでの戦争やミャンマーでの内戦が一刻も早く終結することを願って、戦争をテーマにした童話をお届けします。
わたしは叫びます。
殺すな!
武器をおけ!
あなたの指先には、見知らぬ人の死があるのだ!
子供の王国
二人の盗賊がいました。のっぽのヌースと、ちびだるまの(と、そうばはきまっていますね)ビートです。
二人は、昼間明るいうちに下見をしておいた、大きなおやしきに、夜になってからしのびこみます。そして、宝石やお金を盗んでは、旅をして暮らしていました。
そのころこの国は、となりの国に戦争をしかけました。はじめのうちは、ずいぶんと勝っていたようでしたが、やがて雲行きがわるくなってきました。
二人がお仕事(もちろんドロボウです)をしている村にまで、ある日、となりの国の兵士たちが攻めてきました。戦とうはまる二日続き、いつの間にか、だれもいなくなってしまいました。どちらの国の兵士も、村の人たちも。
ヌースとビートは、この村ではもう仕事(そうです。皆さんの考えたとおり、ドロボウです)にならないので、また旅をはじめました。
村はずれまでくると、小さな男の子が泣いていました。戦争でやけだされて、おなかがすているのでしょう。
「おい、ぼうず。これを食べな。」
ちびだるまのビートが、おむすびを一つあげました。子供は、うばうように受け取ると、いそいで逃げ去っていきました。
二人はあきれて、顔を見合わせると、また歩きだしました。
しばらくして、ヌースがうしろをふり返りながら、「ビート、見ろよ。」といいました。さっきの子が、ほかに三人の仲間をつれて、ついてくるではありませんか。
「しかたないな、つぎの村まで連れていくか。」
ビートは、ありったけの食べ物を子供たちにあたえました。
行く先々の町や村は、どこもはげしい戦いのあとで、とてもひどいようすでした。二人についてくる子供たちのかずは、どんどんふえていくばかりです。こんなにたくさんの子供たちをかかえていては、もうこれ以上仕事をつづけるのは不可能です。
二人は、これまでにたくさんの仕事をして、お金をたくわえていましたので、ひろい土地を買い、大きな家をたてて、子供たちをみんな引き取りました。
のっぽのヌースが言いました。
「ここは、子供の王国だ。大きな子が、小さな子の世話をすること。小さな子は、大きな子の言うことをよくきいて、みんな仲良く暮らすように。」
そのごも、二人はあいかわらず旅をしながら、仕事{わかっていますね}をつづけ、ときどき子供たちにおみやげをどっさり買ってきては、旅先の珍しい話や、面白い話をきかせてあげました。
ある日、二人は仕事中にとうとう捕えられてしまいました。そして、裁判にかけられました。
「このだいじな戦争のさいちゅうに、どろぼうをしてあるくとはふとどきだ。」
と、裁判長が言いましたが、のっぽのヌースが言いかえしました。
「でもよお、盗みはしても人殺しはしてないぜ、おれたちは。」
裁判では、二人が盗んだお金をどう使ったのかも、調べられました。そして人々は、子供の王国のことを知るにおよんで、おどろきの声をあげたのです。
裁判長は、おごそかに言いました。
「それでも、二人の犯した罪は、やはり消えません。二人にはつぐないとして、兵士になって国のためにはたらいてもらいます。」
さいわい、裁判長のはからいで、のっぽのヌースは医りょう班で負傷者や病人の手当てを、ちびだるまのビートは、炊事係で得意の料理のうでをふるいました。
二人は毎日、忙しくはたらきました。
「おれはなあ、ビート。もう盗みはやめにしようと思うんだ。」
「うん。ぼくもそれを考えていたんだ。村へ帰ったら、君は病院で、ぼくは食堂で子供たちのためにはたらこうよ。」
「あいつら、おれたちの帰りをまっているだろうな。」
二人は、これからのことをあれこれと話し合いました。でも、戦争にぜったい安全ということはありません。とうとう二人のいる部たいも戦とうにまきこまれました。
のりこんできた敵兵が、逃げおくれたビートに銃を向けました。ヌースはとっさに銃の引き金を引きました。銃声は、二つ同時にとどろき、敵の兵士は、ゆっくりとくずれおちました。
ビートはおなかに銃弾を受け、血まみれになっていました。
「ビート、しっかりするんだ。」
ビートはヌースの腕の中で、苦しそうに笑いました。
「ごめんね。ぼくいっしょに帰れなくなっちゃった。」
やがて、ヌースは除隊になり、一人で村に帰ってきました。なつかしい子供の王国に、重い足どりでたどりつくと、子供たちが大喜びで出迎えてくれました。裁判長も、村の人々もいました。
そのご、ヌースは仕事(おっと、残念ながらヌースはもうどろぼうはしません。子供の王国のための仕事が、たくさんあったのです)をしながら、子供たちと一生をすごしました。戦じょうでのできごとについては、けっして口にすることはなく、もくもくとビートの分まではたらいたのです。
今でも、ヌースとビートのお墓が、子供の王国の中に仲よく並んでいますし、いつもきれいにされて、花もたえることがありません。
わたしは叫びます。
殺すな!
武器をおけ!
あなたの指先には、見知らぬ人の死があるのだ!
子供の王国
二人の盗賊がいました。のっぽのヌースと、ちびだるまの(と、そうばはきまっていますね)ビートです。
二人は、昼間明るいうちに下見をしておいた、大きなおやしきに、夜になってからしのびこみます。そして、宝石やお金を盗んでは、旅をして暮らしていました。
そのころこの国は、となりの国に戦争をしかけました。はじめのうちは、ずいぶんと勝っていたようでしたが、やがて雲行きがわるくなってきました。
二人がお仕事(もちろんドロボウです)をしている村にまで、ある日、となりの国の兵士たちが攻めてきました。戦とうはまる二日続き、いつの間にか、だれもいなくなってしまいました。どちらの国の兵士も、村の人たちも。
ヌースとビートは、この村ではもう仕事(そうです。皆さんの考えたとおり、ドロボウです)にならないので、また旅をはじめました。
村はずれまでくると、小さな男の子が泣いていました。戦争でやけだされて、おなかがすているのでしょう。
「おい、ぼうず。これを食べな。」
ちびだるまのビートが、おむすびを一つあげました。子供は、うばうように受け取ると、いそいで逃げ去っていきました。
二人はあきれて、顔を見合わせると、また歩きだしました。
しばらくして、ヌースがうしろをふり返りながら、「ビート、見ろよ。」といいました。さっきの子が、ほかに三人の仲間をつれて、ついてくるではありませんか。
「しかたないな、つぎの村まで連れていくか。」
ビートは、ありったけの食べ物を子供たちにあたえました。
行く先々の町や村は、どこもはげしい戦いのあとで、とてもひどいようすでした。二人についてくる子供たちのかずは、どんどんふえていくばかりです。こんなにたくさんの子供たちをかかえていては、もうこれ以上仕事をつづけるのは不可能です。
二人は、これまでにたくさんの仕事をして、お金をたくわえていましたので、ひろい土地を買い、大きな家をたてて、子供たちをみんな引き取りました。
のっぽのヌースが言いました。
「ここは、子供の王国だ。大きな子が、小さな子の世話をすること。小さな子は、大きな子の言うことをよくきいて、みんな仲良く暮らすように。」
そのごも、二人はあいかわらず旅をしながら、仕事{わかっていますね}をつづけ、ときどき子供たちにおみやげをどっさり買ってきては、旅先の珍しい話や、面白い話をきかせてあげました。
ある日、二人は仕事中にとうとう捕えられてしまいました。そして、裁判にかけられました。
「このだいじな戦争のさいちゅうに、どろぼうをしてあるくとはふとどきだ。」
と、裁判長が言いましたが、のっぽのヌースが言いかえしました。
「でもよお、盗みはしても人殺しはしてないぜ、おれたちは。」
裁判では、二人が盗んだお金をどう使ったのかも、調べられました。そして人々は、子供の王国のことを知るにおよんで、おどろきの声をあげたのです。
裁判長は、おごそかに言いました。
「それでも、二人の犯した罪は、やはり消えません。二人にはつぐないとして、兵士になって国のためにはたらいてもらいます。」
さいわい、裁判長のはからいで、のっぽのヌースは医りょう班で負傷者や病人の手当てを、ちびだるまのビートは、炊事係で得意の料理のうでをふるいました。
二人は毎日、忙しくはたらきました。
「おれはなあ、ビート。もう盗みはやめにしようと思うんだ。」
「うん。ぼくもそれを考えていたんだ。村へ帰ったら、君は病院で、ぼくは食堂で子供たちのためにはたらこうよ。」
「あいつら、おれたちの帰りをまっているだろうな。」
二人は、これからのことをあれこれと話し合いました。でも、戦争にぜったい安全ということはありません。とうとう二人のいる部たいも戦とうにまきこまれました。
のりこんできた敵兵が、逃げおくれたビートに銃を向けました。ヌースはとっさに銃の引き金を引きました。銃声は、二つ同時にとどろき、敵の兵士は、ゆっくりとくずれおちました。
ビートはおなかに銃弾を受け、血まみれになっていました。
「ビート、しっかりするんだ。」
ビートはヌースの腕の中で、苦しそうに笑いました。
「ごめんね。ぼくいっしょに帰れなくなっちゃった。」
やがて、ヌースは除隊になり、一人で村に帰ってきました。なつかしい子供の王国に、重い足どりでたどりつくと、子供たちが大喜びで出迎えてくれました。裁判長も、村の人々もいました。
そのご、ヌースは仕事(おっと、残念ながらヌースはもうどろぼうはしません。子供の王国のための仕事が、たくさんあったのです)をしながら、子供たちと一生をすごしました。戦じょうでのできごとについては、けっして口にすることはなく、もくもくとビートの分まではたらいたのです。
今でも、ヌースとビートのお墓が、子供の王国の中に仲よく並んでいますし、いつもきれいにされて、花もたえることがありません。

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